「アンガーマネジメント」という言葉をご存じでしょうか?
最近では、企業のハラスメント研修や管理職研修、スポーツ指導の現場などでも耳にする機会が増えてきました。
私も以前から言葉自体は知っていましたが、正直なところ、
「怒らないようにするためのテクニック」
というイメージを持っていました。
先日、終日「アンガーマネジメントファシリテーター研修」を受講しました。今回は、実際にアンガーマネジメントについて体系的に学んで感じたことを書いてみたいと思います。
アンガーマネジメントとは?
アンガーマネジメントとは、その名前のとおり「怒り(アンガー)」と上手に付き合っていくための考え方やトレーニングです。
ここで大切なのは、「怒らない人になること」が目的ではないということです。
怒りは、人間にとって自然な感情の一つです。
仕事をしていても、家庭でも、スポーツでも、「なんでそんなことするの?」「それは違うだろう」と腹が立つことはあります。
怒りを完全になくすことなんてできませんし、怒ることそのものが悪いわけでもありません。
今回の研修で特に印象に残ったのが、
「アンガーマネジメントは、怒らないことではなく、怒りによって後悔しないこと」
という考え方でした。
「あんな言い方をしなければよかった」
「感情的になって部下を必要以上に叱ってしまった」
「子どもに言い過ぎてしまった」
そんな「怒ってしまった後の後悔」を少しでも減らしていく。
そのために、自分の怒りの特徴を知り、怒りが生まれる仕組みを理解し、適切に対処できるようにしていくのがアンガーマネジメントです。
自分の中にある「べき」に気づく
研修では、怒りが生まれるメカニズムについても学びました。
その中で特に興味深かったのが、人それぞれが持っている**「こうあるべき」**という価値観です。
例えば職場で、
「上司にはきちんと報告するべき」
「社会人なら時間を守るべき」
「これくらいは言われなくてもやるべき」
と考えている人がいるとします。
ところが、相手がその「べき」のとおりに行動してくれない。
そこで、
「なんで報告しないんだ!」
「普通これくらい分かるだろ!」
と怒りにつながっていくことがあります。
そして今回の研修で、自分自身の「べき」についても考えてみました。
私の場合、特に子育てについて「べき」が多いことに気づきました。
「子どもは早く寝るべき」
「夏休みの宿題は早く終わらせるべき」
などなど。
もちろん、親としては子どものためを思って言っているつもりです。
でも、さらに掘り下げて考えてみると、結局のところ、
「子どもは親の言うことを聞くべき」
という大きな「べき」に、自分自身がとらわれているのではないか。
そう気づいたときには、ちょっとドキッとしました。
子どもが自分の思ったとおりに動かないからイライラする。
でも、そもそも「親が言ったことには従うべき」という自分の価値観が、その怒りを大きくしていたのかもしれません。
もちろん、「じゃあ何も言わない」という話ではありません。
早く寝た方がいいことも、宿題は計画的にやった方がいいことも変わりません。
ただ、
「自分はいま、この『べき』にとらわれて怒っているんだな」
と分かるだけでも、少し怒りを客観的に見ることができます。
私自身、この自己認識ができただけでも、少し肩の力が抜けたような気がしました。
自分の「当たり前」を相手も同じように考えているとは限らない。
これは子育てだけではなく、夫婦関係でも、職場でも、スポーツ指導でも同じなのだと思います。
ハラスメント対策としても重要
社労士として今回の研修を受けて、特に感じたのが、アンガーマネジメントとハラスメント対策との相性の良さです。
企業からハラスメントのご相談を受けることがありますが、
「本人にはハラスメントをしている意識がない」
というケースは珍しくありません。
本人としては、
「指導しているだけ」
「仕事なんだから、これくらい言って当然」
「昔はもっと厳しかった」
と思っている。
これもある意味では、その人自身の「べき」なのかもしれません。
しかし、その「べき」が強くなり、さらに怒りの感情が加わることで、必要な指導を超えてしまうことがあります。
もちろん、アンガーマネジメントを学べばハラスメントがすべてなくなる、という単純な話ではありません。
それでも、自分自身の怒りを客観的に捉え、感情に任せて言葉や行動を選ばないためのトレーニングは、ハラスメント防止において非常に有効だと感じました。
特に、部下を指導する機会の多い管理職には、ぜひ知っていただきたい内容です。
スポーツ指導にも活かしたい
そして、今回私がアンガーマネジメントを学びたいと思った理由は、もう一つあります。
私は普段、剣道の指導にも携わっています。
スポーツの世界でも「スポハラ」という言葉が使われるようになり、指導者の暴言や威圧的な指導などが大きな問題となっています。
これも決して他人事ではありません。
一生懸命教えているからこそ、
「なんで練習したことをやらないんだ」
「もっとできるはずなのに」
と、ついつい感情が入ってしまう。
ここにも、
「教えたことはやるべき」
「これくらいはできるべき」
という指導者側の「べき」が隠れているのかもしれません。
特に自分の子どもとなると、指導者としての「べき」と親としての「べき」のダブルパンチです(笑)。
「子どものために言っている」という気持ちがあっても、それが感情的な指導になってしまっては意味がありません。
スポーツ指導者としても、自分の怒りとどう付き合うかは、これからますます大切になってくると思います。
企業研修にも取り入れていきます
今回の研修では、アンガーマネジメントの知識だけでなく、「アンガーマネジメント入門講座」を実施するための講座の進め方や伝え方についても学びました。
非常に体系的に作られており、普段セミナーや企業研修を行っている私にとって、講師としての伝え方という面でも大変参考になりました。
ハラスメント対策というと、
「これはパワハラです」
「これはやってはいけません」
という禁止事項を学ぶ研修になりがちです。
もちろん、それも大切です。
でも、その一歩手前にある、
「なぜ自分は腹が立つのか」
「自分にはどんな『べき』があるのか」
「怒ったときにどう行動するのか」
「相手との価値観の違いをどう受け止めるのか」
を考えることも、職場のコミュニケーションを良くするためには大切なのではないでしょうか。
私自身も、まだまだ実践していかなければなりません。
仕事でも、家庭でも、そして剣道でも(笑)。
今回学んだアンガーマネジメントを、これからの企業研修やハラスメント対策にも活かしていきたいと思います。
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