もし正しく給与計算が出来ておらず、残業代が適正に支払われていない場合、どの程度請求される可能性があると思いますか?
<民法の大改正>
2020年3月31日まで、労働基準法115条により「この法律の規定による賃金(退職金を除く)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合において、時効によって消滅する」と規定され、残業代請求の消滅時効は、原則2年とされていました。
この短い時効期間のため、気づかないうちに請求権が失効する労働者が多く、特に長時間労働が常態化している職場での問題が指摘されていました。
そのため2020年4月1日に施行の改正民法116条は、債権の消滅時効期間について、権利を行使することができることを知った日から5年とし、それまで定めていた短期消滅時効を廃止しました。明治時代に作られた「民法」は、これまで大きな改正が行われてきませんでした。なんと、民法制定後約120年間で初の全面的な改正となりました。
<一般法と特別法>
法律用語では、一般法と特別法が存在します。一般法とはその分野に対して一般的に適用される法であり、特別法がない限りその法律は適用されます。一方、特別法は一般法に優先します。一般法と特別法とで法が異なった規律を定めている場合、特別法の適用を受ける事象は一般法の規律が排除され、特別法の規律が適用されるとされています。
民法は個人間の法律を定めた一般法であり、労働基準法は使用者・労働者間に限定された特別法となります。ですので、労基法は民法の影響を強く受けるんですね。民法で、債権の消滅時効が5年となった以上、労基法はどうするのか議論が重ねられました。
結果、5年への経過措置として当面の間、3年間の消滅時効期間とするとされました(労働基準法の一部を改正する法律)。
ですので、2020年4月1日から発生する賃金債権については、時効が3年となります。毎月3万円程度の未払残業代が発生しているとするならば、3万円×12か月×3年=108万円もの金額になります。それが数人に及べば、大変な金額になりますよね。
<遅延損害金とは>
また未払賃金を請求する場合、遅延損害金を合わせて請求されることも。遅延損害金は、未払賃金に対し利率は3%、退職後の未払い期間の利率は、年14.6%と非常に高額になるおそれがあります。
これらのリスクを回避するため、適正な労務管理のため、社会保険労務士をご活用ください。